原命式を立てた後に、最初に判断するべきことは何でしょうか?
それは「命式全体の五行それぞれの力量バランス」と「日干の強弱」(旺衰)を判断することです。
次にすべき判断は「日干が身旺なのか身弱なのか」という判断で、これが命式の判断において決定的な重要性を持っています。
似たような干支の並びである命式でも、日干が身旺なのか身弱なのかによって判断が180度変わってきます。用神の選び方、通変の吉凶、事象の解釈すべてに連動します。
なので、これが正確に判断できないと(旺衰の判断を誤ると)その後の診断が全部ズレてきてしまい誤占となってしまいます。
日干の強弱(旺衰)とは何ですか?
日干の強弱とは日干自身にどれぐらいの力量(パワー)があるのか?
季節の五行や他の干支から生じられていて「強い」(旺相)のか、剋されたり漏気が激しすぎて「弱っている」(死休囚)のか、という判断のことです。

ちなみに、日干強いから吉、日干弱いから凶というほど単純ではありませんのでご注意下さい。
「身旺」には身旺固有の問題点や落とし穴があり、「身弱」には身弱固有の問題点と落とし穴があります。身旺すぎても身弱すぎても「中庸」から外れていき、様々な問題や周囲とのトラブルを生じます。
要するに、身旺か身弱かの違いは「不幸・問題に傾いていく原因構造」が異なるだけで、強すぎても弱すぎても不良な事象を生じることに変わりありません。
命式を絵画に譬えるならば、「身旺」は派手な色で重厚に塗りたくられた大胆なタッチの油絵、「身弱」は淡いパステルトーンで描かれた繊細な世界観の水彩画のような趣の違いがあります。
どちらも「美しくなりうる」のですが、その趣向や世界観がまったく異なるのです。
ざっくり分けると、原命式から「身旺、身中、身弱」の3つに分類します。
<身旺>
日干と同じ五行(比劫)が命式内に多いか、日干を生じる五行(印星)が多く、日干が強くなっていて、日干を弱めるものが少ない状態を指します。(ざっくり言えば、下の図で言う「A」が多い状態)

自己主張が強く、自己中心的な言動に走りやすくなります。自分の考えや意見ばかりを強く主張して、他人に対する配慮が乏しくなりがち。
世界が自分中心に都合よく回っているかのような錯覚を持ちやすく、他人や周囲の反応や迷惑を気にしないで、自分のやりたいことや意志ばかり通そうとします。
身旺が起こす問題の典型例は、人と争いを起しやすく、ワンマンすぎて孤立したり、頑張ってるつもりが空回りばかりして世間から評価されなかったり、思い通りにいかないと粗暴になって周囲を破壊します。結果的に、お金(収入)も仕事(お勤め)も恋愛もうまくいかない。
しかし、強すぎる欲望だけは人一倍強烈で思い通りにならない現実に耐えられず地団太を踏んでいる、なんてことがよく見られます。この「空回り現象」が身旺さんに見られる特徴的な現象です。

身旺の長所は、打たれ強くガッツがあり、困難な状況でも気合いで突破していくだけの根性とバイタリティがあることです。よく言えば、積極性、主体性、決断力、行動力があります。優柔不断な身旺はあまりいないと思って下さい。○○したいと思ったら躊躇せず即決で行動に出ます。
周囲のことや他人のことを省みず、自己主張ばかり繰り返すので、組織や会社では煙たがられ干されがち。勤め人には向かなくドロップアウトして自営業などを始める方も多いのです。

失敗も多い一方、何度でも諦めずにチャレンジする打たれ強さがあります。失敗の多さや過ちを、再チャレンジ数と手数の多さ(行動力)でなんとか「強引」に突破しようとする傾向があるのが身旺さんです。しかし、学習しないと同じ過ちを延々と繰り返します。
月令を得ているか、日干と同じ五行の地支が2~3個は存在しているものが「ホンモノの身旺」の命式です。
<身弱>
日干と同じ五行(比劫)や生じてくれる五行(印星)が少なく
剋し剋される五行(官殺と財星)や漏れ出る五行(食傷)が多くて、日干が「虚弱」になっている状態です。(ざっくり言えば、下の図で言う「B」が多い状態)

積極性や行動力に乏しく、物事を最後までやり遂げる意志や継続性に乏しく、消極的・悲観的に後ろへ後ろへ下がっていきます。
悪い環境下に置かれても、その状況を何とか打開しようとするだけの気概に乏しく、もともと行動力や主体性が欠けているため、周囲(他人)や環境に流されて翻弄されるような生き方をします。
本人自身も「何がやりたい、こうありたい」といった人生上の目的意識が乏しく、正しい努力の方向性すら定まらない人が大半です。

身旺のように他人を積極的に加害することは少ない(当たりの柔らかい人が多い)のですが、言い換えると「薬にもならず(役にも立たず)毒にもならず」といったクラゲのような存在になりがち。
身旺と違って、身弱は自分を通せません。自分の意思や思いを貫くことができず、相手の顔色ばかりを伺ったり、周囲に気兼ねして遠慮して何も言い出せなかったり、ハッキリ断れないので「損な役回り」ばかり押し付けられてと、自分の芯や軸がブレブレであるがゆえに、他人と環境に翻弄されて消耗していくのです。
身弱の命式は、身旺と違って漏出する「食傷」、剋そうとする「財星」、剋される「官殺」のいずれが多いのか(どういう組み合わせなのか)によって、それぞれの思考回路や行動原理、キャラクターの出方に大きなバリエーションがあります。身旺よりも「個別の分類」としては複雑になります。

基本的に、身弱は、日干の根となる地支が「皆無」であるか1個以下しかなく、助けてくれる印星や比劫も1個以下で少ないものです。
<身中>
日干を強めるもの、弱めるもののバランスが均衡していて、特に強くも弱くもない状態です。

原命式が身中であれば、人間的にはバランスが取れていて大きな偏りは少なく、常識的な考え方・判断力を備えている人が多いです。穏健なバランスの取れた言動をするのでトンチンカンなことはしません。
その反面、際立った能力や個性に乏しく意外と平凡な人も多いです。また身旺すぎる人のような強烈な過ぎた欲望も無いので、さほど出世欲や金銭欲もなく、ほどほどの地位や収入でも十分に満足して生きているでしょう。
「身旺」すぎれば、日干のエネルギーを有用に消費して制御されるための用神を使いますし、「身弱」すぎれば日干を補強して本来の役割が果たせるようにする用神を使って「中庸・均衡」である「身中の姿」を目指して改善を図っていくのです。

そうなると、生まれつき原命式が「身中」であることが好ましいと思ってしまうかもしれませんが、必ずしも原命式でバッチリ「身中」である必要性はありません。というのも、原命式だけで五行力量バランスが完全に均衡していると、必ず後天運(大運)ではそのバランスが崩れてしまうからです。

開運のための「用神」がかえって定まりにくく、鑑定が微妙な判断になるケースが多いのも「身中」の特徴です。
ですから、たとえ身弱であっても身旺であっても、改善の方向性を示す「用神」を明確に1つ定めることができて、命式内に1~2個ぐらいは「用神」を備えていて、それだけの力量では開運するには及ばないが、
後天運(大運)で「用神」が旺じる運勢の巡りが「20~50才前後」の青年~壮年期に切れ目なく回ってきてくれるような構造を持っている命式&大運の組合せが、実は最も理想的かもしれませんね。

このような命式の持ち主は、もともと命式内に多少なりと用神の星があるので、自分で意識して用神を使う=用神の方向性で自己改善して健全な努力をしやすいでしょう。命式の中にもともと存在があるのと無いのとでは全然違います。
そんな理想的な配合・構造になっている命式&大運の持ち主はそうそういません。命式は良くても大運に恵まれないというケースはけっこう多いです。
後天運(大運)によっては「身旺・身弱」が覆ることも
さて「身旺・身弱」とひとことで言っても、実際には強さ弱さのグラデーションがあります。
暴君レベルのとんでもない身旺なのか、そこそこな身旺なのか、箸にも棒にも掛からないレベルのものすごい身弱なのか、ある程度は自力で頑張れるだけの日干力量があるそこそこの身弱なのか、といった違いです。
そして、極端すぎる身旺や身弱であれば、後天運でたとえ「専旺干支」が来たとしても、原命式での傾向性(生まれつきの身旺・身弱)が簡単に覆ることは無いでしょう。
しかし、そこそこの(身中に近いような)身旺や身弱の場合は、後天運の巡り方によっては、身旺だったものが身弱に逆転してしまったり、身弱だと思っていたものが急激に身旺に化けたりすることがありえます。
実際には、大運の流れを考慮しないで正しい診断はできません。命式だけでなく大運の影響も考慮しながら、日干の旺衰、用神の選定をしていかなくてはなりません。